私の遠回り~会えなかった時間~

そう言って彬さんがスマホを切ろうとした。

「あっ、彬さん。」

私の声は何とか間に合ったようだ。

「知紗、まだ何かあったか?」

彬さんの声が聞こえてくる。

「少しずつお互いの事を知っていきましょうね。」

そう言ってしまってから、私はすごく恥ずかしくなってしまった。

「じゃあ、今からお昼を食べますね。」

慌てて私はスマホを切ろうとする。

すると今度は彬さんが引き留めた。

「知紗、楽しみに待っているよ。」

私が声を出す前に、今度こそスマホはあっさりと切れた。

ツーツー。

しばらく放心状態だったが、フッと我に返った私は慌てて食堂の浜田さんの元へ戻った。

< 57 / 244 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop