私の遠回り~会えなかった時間~
そう言って彬さんがスマホを切ろうとした。
「あっ、彬さん。」
私の声は何とか間に合ったようだ。
「知紗、まだ何かあったか?」
彬さんの声が聞こえてくる。
「少しずつお互いの事を知っていきましょうね。」
そう言ってしまってから、私はすごく恥ずかしくなってしまった。
「じゃあ、今からお昼を食べますね。」
慌てて私はスマホを切ろうとする。
すると今度は彬さんが引き留めた。
「知紗、楽しみに待っているよ。」
私が声を出す前に、今度こそスマホはあっさりと切れた。
ツーツー。
しばらく放心状態だったが、フッと我に返った私は慌てて食堂の浜田さんの元へ戻った。