私の遠回り~会えなかった時間~
「ねえ、彬さんって…、その美容師さんの名前ってもしかして山瀬彬じゃない?」
「えっ?どうして浜田さんが彬さんを知っているんですか?」
私は驚いて浜田さんを見つめる。
「海外で活躍している日本人スタイリストよ。まだまだ日本での知名度は低いけど、うちのような化粧品会社ではきっと知らない人は居ないと思うわ。大沢さん、勉強不足よ。」
ちょっと顔をしかめて浜田さんは私を見る。
「確か…、急にあちらの仕事をすべて整理して姿を消したって話よ。へぇ~、日本に帰って来ていたんだ。」
「浜田さん、本当ですか?」
私は浜田さんの話にただただ目を丸くするだけだ。
実は彬さんは凄い人なの…?
そんな人にただで髪を切ってもらって、その上成り行きとはいえ、付き合う事になって…。
そんな人だと知っていたら、私はどうしていただろう。