私の遠回り～会えなかった時間～

「ただいま。」

私は玄関に見慣れない靴を見つけた。

中からは聞きなれた笑い声が聞こえる。

「加代さん、来ていたの？」

私は居間でくつろいでいる加代さんに声を掛けた。

「あら、知紗ちゃん、お帰りなさい。お邪魔しているわ。」

私は加代さんの横に腰を下ろす。

「知紗、加代さんの相手をしてあげて。私は夕飯の支度をしてくるわ。」

お母さんが立ち上がってキッチンへ向かう。

「今日は夕飯を御馳走してもらいに来たの。今までは美容院を空ける事が出来なかったから、すごく新鮮だわ。」

加代さんの視線は私の髪に止まった。

「知紗ちゃん、今度の日曜日にうちの美容院が新装開店するの。」

私は加代さんの顔を見て首をかしげる。