私の遠回り~会えなかった時間~
うちの化粧品会社の花形の企画室はとても忙しいらしく、私達総務の人間のように時間通りにはお昼も取れないらしい。
「今日はたまたまこの時間が空いたんだよ。でもこの時間だと食堂も混んでいるんだな。いつもは時間がずれているから、席を探すのにもこんなに苦労した事がないよ。」
そう言って木本さんは私にも微笑んでくれた。
そして私にも話しかけてくれた。
「えっと…、大沢さんだよね?随分大胆に髪を切ったんだね。」
そんな風に話を振られ、私は曖昧にうなずく。
「そう、私の後輩はイメチェンしても可愛いのよ。でももっと驚く事があるの。」
浜田さんは少し声を落として、木本さんに得意げな顔を見せた。
「大沢さん、あの山瀬彬に髪を切ってもらったらしいのよ。」
一度浜田さんの方を向いていた木本さんは、もう一度私の方を振り返った。
「山瀬彬って…、あの?」
そしてまじまじと木本さんは私の髪型を見る。