私の遠回り~会えなかった時間~
「やっと浜田抜きで君と二人になれたよ。こんな機会が今度はいつ来るか分からないからね。今度二人で出掛けない?」

木本さんはそう言い残すと、手を離して私をしばらく見た。

私から言葉が発せられないのを感じたのか、木本さんは苦笑いをしながら、手を上げた。

「これはデートのお誘いだからね。では返事はまた今度。」

そして颯爽と去って行った。

私は無意識にウインドウを閉めていた。

今更ながら、胸がドキドキとしてきた。

あまりにも思いがけない出来事にただ茫然とする。

でも…。

私の中には木本さんに対する戸惑いだけが残っていた。

私は木本さんの事をほとんど知らないのに…。

そこで私はハッとする。

彬さんの顔が私の頭の中に浮かんできた。

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