私の遠回り~会えなかった時間~
同じようにほとんど私は彬さんの事を知らない。

木本さんと同じ状況のはずなのに、自分の気持ちの違いに我ながら驚く。

彬さんとはやっぱり以前に何かあったんだろうか。

彬さんの存在が私に説明のつかない安心感を与えるのはどうしてなんだろう。

「いけない!」

私は思わず大きな声を上げると、車を慌てて動かし始める。

彬さんを待たせているのに何しているんだ、私。

つい2日前に来たばかりの美容院の駐車場に自分の車を停めた。

いつもは家から歩いてくるから、何だかおかしな気分。

車を降りると、美容院の入口の所に彬さんが立っていた。

「遅かったな。」

すこしイラッとしている彬さんの表情。

私はびくびくしながら、彬さんに駆け寄った。

「すいません。帰る時に会社の人に呼び止められました。」

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