私の遠回り~会えなかった時間~
「そろそろ髪をそろえる時期でしょう?知紗ちゃんに前日の土曜日に来てほしいのよ。」

加代さんは嬉しそうに笑う。

「なかなかいい感じのお店になったのよ。知紗ちゃんにも見てもらいたいわ。私はぜひあの店での第1号のお客さんは知紗ちゃんになってほしいのよ。」

私は思わず眉間にしわが寄る。

「加代さんに髪を切ってもらえないのなら、どうしようかな。」

私は少しふてくされたように言う。

「大丈夫。あの子の美容師としての腕は私が保証するわ。」

加代さんは誇らしげな表情を私に向けた。

「あの子も今まではいろいろな店を転々としながら、腕を磨いてきたの。今年30歳になるから、お姉さんと相談して私の店を譲って独立をするように勧めたの。」

加代さんは優しい表情で私の髪に視線を向ける。

「すごく張り切っているし、もちろん何人かの顧客は連れてくるでしょうけど、こっちではまるっきり初めてになるから、私の顧客も引き継いでもらおうと思ってね。」

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