私の遠回り~会えなかった時間~
彬さんは私の予想に反して、顔を大きくゆがめた。

「ちょっと待て。知紗、きちんと初めから話をしろ。」

「だから、ちゃんとお断りするって言っているじゃないですか。」

私はじっと彬さんの目を見る。

ますます鋭く細くなっていく彬さんの目。

「何があったんだ?」

彬さんはこのまま美容院の前で話をするつもりなんだろうか。

「彬さん、ここじゃ落ち着かないので中へ入れてくれませんか?」

私の言葉に、そわそわとした様子が隠せない彬さん。

どうしたの?

「詳しい話は中でしよう。知紗、これだけ答えてくれ。」

私の顔に彬さんの顔が思いきり近づく。

私は思わず後ずさりをする。

そんな私の両腕を彬さんが捕まえた。

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