私の遠回り~会えなかった時間~
そして私の髪をすくった。

「その第1号に知紗ちゃんを任せようと思っているの。協力してくれるわよね?」

加代さんはにんまりと笑う。

そこへお母さんが料理を運びながらやって来た。

「へぇ~、いいじゃない。知紗、行ってらっしゃいよ。」

お母さんは楽しそうに笑う。

私はお母さんから皿を受け取りながら、苦笑いをする。

「でも…。」

そんな私の言葉は直ぐに加代さんに消されてしまう。

「大丈夫だから。実はもうあの子にも伝えてあるのよ。私の自慢の顧客に声を掛けてあるって。だから来てもらわないと困るのよ。」

さすがにずっと一人で店を切り盛りしてきた加代さんだ。

その勢いに私はあっさりと押し切られてしまう。

でも私は納得がいかない表情を崩せなかった。
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