私の遠回り~会えなかった時間~
そう。

彬さんはあの2日後、美容院が終わった後に家にきちんとやって来たのだ。

来た時の彬さんはきちんとしたスーツ姿でびっくりした。

いつもはシャツにジーンズのラフな恰好ばかりの彬さんの大人の姿に、私は見とれてしまった。

彬さんはきちんと手土産を用意して…、少し緊張していた。

お母さんから話を聞いていたお父さんもにこやかに彬さんを受け入れた。

そこで私は彬さんの言葉を聞いて、失神しそうになる。

「まだお付き合いを始めたばかりでこんな事を言うのは早いかもしれませんが…、私は知紗さんとの結婚を真剣に考えています。だから知紗さんに日曜日に美容院を手伝ってもらう事を正式に許してほしいのです。」

そんな仕事熱心で将来を考えての彬さんの言葉に、お父さんはほろっと来てしまったようだ。

「美容院の仕事を二人でやって行きたいんです。」

これはとどめの一言だった。

海外でスタイリストをしていた関係で衣装選びからメイクまで出来る彬さんは、パーティ出席のトータルコーディネートなども頼まれる。
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