私の遠回り~会えなかった時間~
「とにかく今日は一日よろしくね。」
私がもう一度頭を下げると、山本さんは私に指示を与え始めた。
「私は取引会社の担当者の顔を知っているから、なるべく挨拶をして名前をお呼びするようにするから、このリストにチェックをして下さい。そして記念品とパンフレットの補充をお願いします。」
山本さんはきっちり仕事の顔になる。
私もいつかこんな素敵な大人の女性になれるんだろうか。
ぼんやりとそんな事を思っていると、そろそろ受付時間が近づいてきたようだ。
私の中の余分な思考はきっちりと切り替わった。
入口の辺りがざわざわとし始める。
山本さんの細やかな気遣いの為に、スムーズに受付が進んでいく。
受付のリストもどんどんチェックされていく。
それがほとんど埋まった頃だった。
「そろそろ始まりそうね。」
山本さんはいつの間のか閑散とした受付で深呼吸をした。