私の遠回り~会えなかった時間~
「あら、この子なら上出来ね。私は美容部員の久保です。とにかくここに座ってくれる?」

私は言葉を発する事も出来ずに、言われるままに洗面台の前に座らされた。

「今から化粧を落とすからね。」

時間がないせいか、久保さんはそれから一言も発せずにてきぱきと手を動かしている。

その後ろでそわそわと腕時計を何度も見ている山本さん。

私は化粧を落とされ、化粧水のみが施された。

「きれいな顔立ちで、きれいな肌をしているのね。やりがいがあるかも。」

そう言いながら作業を終えたらしい久保さんが笑った。

それと同時に外から声が掛かった。

「久保さん、お願いします。」

山本さんが振り返って、久保さんと私を交互に見た。

「はーい、了解。」

久保さんが私を立つように促した。

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