ねぇ先輩、名前をよんで。
1章:切なさと、甘さ。

入学式








桜の花びらがひらひらと落ち始める

4月のことだった。


入学式と書かれた看板が

校門の横におかれている。


新しい制服を着て、私はゆっくりとその門を通った。


桜でピンクに染まった街。


聞こえてくる笑い声は

今の私の気持ちには似合わない。


先輩はいるだろうか。


門を通ると一目散に屋上に向かう。


願うようにドアを開けると、

そこには寂し気にフェンスを握る先輩がいた。


やっとここまで来た。


先輩に会うためだけに

私はここにやって来た。



「先輩……」


太陽に負けないくらい輝いていた先輩は

突然色を無くしてしまった。


屋上から外を眺めながら、

今にも消えてしまいそうな背中をしている先輩に


必死で手を伸ばして止めた。



――行かないで。



思わず先輩の手を取った私。


先輩はゆっくりと振り返る。






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