ねぇ先輩、名前をよんで。
一瞬、呼吸が止まった。
先輩を見ることが出来ず、
ふよふよと浮かぶクラゲを見つめる。
「事故に遭う前、
一緒に水族館に行く約束してたんだけど行けなくなっちゃった……」
ああ、そうか。
それでだったんだ……。
私としか出来ないこと。
先輩が私を水族館に誘ったのは。
何も私と行きたかったわけじゃない。
私は優さんの代わりだ。
幸せな時間がいつまでも続けばいいと願った願いは
打ち砕かれた。
悲しかった。
浮かれていた自分がバカみたいだと思った。
「……っ」
先輩の前での私は、
”私”じゃなくて
あくまでも優さんの代わりなんだ。
涙が出そうになるのを必死で堪える。
店の中が暗くて良かった。
こんな顔……先輩には見せられないから。