ねぇ先輩、名前をよんで。




毎回毎回。

先輩の言葉にドキドキしては悲しい気持ちになる。


一体何度、これを繰り返せば気がすむのだろう。


うつむくと、我慢していた涙がこぼれてくる。


人は好きな人の側にいると、

どんどん好きになってしまうものだ。


好きなことを抑えられない。


「痛いな……」


ぎゅっと締め付けられた胸が痛くて。


先輩の過去を思い出すような表情が苦しくて。


私は強く唇をかみしめた。


その時。


「橋本……?」


遠くで声をかけてきた人が私の元にやってくる。


「やっぱり橋本だ」


走って目の前にやって来たのは清水くんだった。


「しみず、く……っ」


清水くんはストライプのTシャツにジーンズの私服姿で、私を見る。



涙を見られないようにとっさにうつむいた私に

彼はふたたび声をかけた。



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