ねぇ先輩、名前をよんで。






「せ、先輩が話し相手になってくれるからですよ」


「…………」


私の言葉に先輩は何も返さない。


言えるわけがない。


好きだという私の気持ちなんて。


心にとどめておくって決めたから……。


「ゆうちゃんはいつも俺の側で笑ってくれる。

でも、時折ものすごく寂しそうな顔をする」


「そんなこと、ないです」


声が震えた。

その続きを言わないで。


心がそうやって叫びだす。

でも先輩はゆっくりと、そしてハッキリと言った。


「俺の側にいることでゆうちゃんを傷つけることになるなら……

この関係はもうおしまいにしよう」




さあっと強い風が吹き、

私たちの間を通り抜けていく。


まるでこの関係の終わりを知らせるように。


「先輩……っ」



< 126 / 250 >

この作品をシェア

pagetop