ねぇ先輩、名前をよんで。
掠れた声で先輩の名前を呼んでも、
先輩はこっちを見てくれない。
「なんで……」
「傷つくのは俺ひとりでいいんだ。
ゆうちゃんを巻き込みたくない」
先輩が傷つくのか嫌だったからここに来た。
あの日の先輩がもう一度見たくて
この学校に入ったんだ。
終わりなんて、絶対に嫌だ。
「……や、です」
「ゆうちゃんにもさ、自分の生活がある。
友達と遊びたい時だってあるでしょ?
無理して俺のところ来ることないよ」
「無理なんてしてないです……っ」
そんな簡単にやめようと言ってしまわないで。
そんな風に突き放したりしないで。
私は先輩の手を握った。
冷たくて冷え切った手も、
人の温もりひとつで暖かくなっていく。
でも、ひとりじゃそれは出来ないから。