ねぇ先輩、名前をよんで。
「すみません、先輩。
ハンカチを教室に忘れたみたいなのでとって来ますね」
「うん」
屋上の扉をあけて階段を降りようとした時。
そこには
私のハンカチを持った清水くんがいた。
「清水く……」
彼の顔を見ることが出来なかった。
「それ、私のハンカチ……」
「うん。教室に落ちてた」
「あり、がとう……」
届けに来てくれたんだろうか。
さっき先輩と話した内容は
清水くんに聞こえてしまっていただろう。
みっともなくすがる姿を見て彼はどう思ったかな。
滑稽だって思ったかな。
それとも呆れたかな。
清水くんは持っていたハンカチを
私の手の中に押し込んで言った。
「変わろうとしなきゃ、人間変わんねぇぞ」
それだけを残して去っていく。
その言葉が私の胸を強く突きさした。