ねぇ先輩、名前をよんで。





そうか。

踏み込んで来ない関係は何も無かったんだな……。



『清水くん、ちょっとこれ手伝ってくれる?』


そう気づいたこの日。

吉岡にそう言われ、

資料を運んでいると隣で嬉しそうな顔をしている彼女がいた。


『清水くんがこんなことしてくれるようになるなんて……

先生嬉しいな』


『別にただのきまぐれだろ』


教科室に行き、

資料を机に置くと自然と手に視線を移す。


あの時。

火傷のことを謝ることが出来なかった。


『火傷、痕残ってねぇの?』

『ああ、薄くなったから消えるんじゃないかな』


白くキレイな手。

そんな手を傷つけてしまった。


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