ねぇ先輩、名前をよんで。
『ごめん……』
あの時言えなかった言葉を驚くほどすんなり出て来た。
すると、吉岡は少し驚いた顔をして笑って見せた。
『もう吸わないなら許してあげる』
ーードキッ。
吉岡の笑顔に胸が音を立てる。
その時に気づいてしまった。
ああ、俺はコイツが好きなんだ。
好きになってはいけないと分かっていて
好きになってしまった。
諦めなくてはいけない。
この気持ちを無かったものにしなくては。
そう思うのに、
好きだという気持ちは増していくばかりだった。
話せばまた意識するし、
現国の授業だけが楽しみで必死に頑張っている自分がいる。
おかしかった。
あんなに冷めていた自分が
こんなにも変わるんだと。