ねぇ先輩、名前をよんで。



『拓ちゃんに今日会えるかな〜』

『また彼氏のこと考えてんのかよ』


『最近上手くいってなくて……

って、こんな話してたなんて内緒だよ?清水くんにしか言えないもの』



ダメだと思っていても、

好きになることを止めることは出来ない。



想いを伝えることは絶対にせず、

心の中に押し込めて押し込めて。


それから何度もむなしくなったのを覚えている。


何してるんだ自分は。

吉岡が婚約者との話をするたびに

痛くなった心を庇いきることは出来なかった。


けっきょく卒業式の日。

吉岡は来週式をあげるんだと俺に報告をした。


幸せそうだった。


そんな表情の吉岡を見て、

行き場のない気持ちを永遠に心にしまい込んだ。


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