ねぇ先輩、名前をよんで。
彼は小さくつぶやくと、
すぐ隣の先輩に視線を移す。
それが気まずくなってボールを投げると彼は上手にキャッチした。
「サンキュー」
清水くんはボールを受け取っても
すぐに仲間のところには帰らず私を見ていた。
清水くんの姿が見えると変に緊張する。
まるで“行くのかよ”と
言われているようだった。
「じゃ、また明日」
清水くんの小さな言葉に私は頷く。
いつまでも変わらない私を見て
清水くんは呆れただろうな。
清水くんとは学校でも少しずつ話す関係になった。
いつも集まっているグループから抜けて私に視線を送る。
それは、人がいない非常階段に来て、
という合図だった。
そこに行けば、特に大事な話をするんでもなく