ねぇ先輩、名前をよんで。
「楽しかったです、すごく」
帰り途。
先輩との間に少しの沈黙が流れる。
すると先輩は歩きながら静かに聞いてきた。
「ゆうちゃんはさ、好きな人とかいないの?」
「えっ」
ドキリと心臓が胸を打つ。
手にじわじわと汗をかき始めた。
「な、なんでですか?」
「気になるなあって思ってさ」
私が先輩を好きだってこと、
気づかれてないよね?
私は一瞬だけ先輩を見た。
先輩は今どんな顔してるんだろう。
薄暗くて分からない。
最近は先輩の方から私のことを尋ねてくることが多くなった。
だけど期待してはいけない。
そう分かってるけど、
少しでも私に対する気持ちが変わってくれたらいいなって思っていた。
初めて会った時よりも、
先輩の心の片隅にいるくらいでいいから。
変わっていてほしい。