ねぇ先輩、名前をよんで。



「ゆうちゃんもそういう人が出来たら

俺から離れて行っていいんだからね、


俺にあんまり気を使わないで」


なんで。

じわじわとボヤけていく視界。


「なんで……っ、そんなこと言うんですか」


私の言葉に先輩は目を逸らしながら言った。


「だっておかしいだろ。

彼氏が出来ても俺のところに来てたら」


本当は自分のことも見てほしい。


側にいればいるほど

募っていく思いを口にしたいと思ってしまう。


私は先輩が好きなのに。


嘘で塗り固めて来た気持ちは

ゆっくりと剥がれ出した。


何度止めただろう。


何度ダメだと言い聞かせただろう。


自分で言わないと決めたのに、

抱え込むのは辛すぎて。


ずっと心の中で想って来た気持ちは

行き場をなくして。


もうどこにとどめておいたらいいのか

分からなくなってしまった。



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