ねぇ先輩、名前をよんで。



本当は代りなんかじゃなくて、

私のことを見てほしかった。


少しでも……

私という存在を見て欲しかった。



「すみませんでした、変なこと言って……」


それでも、

先輩を困らせたくないから。


私はその場から逃げることにした。


「ゆうちゃん……俺……」

「今日は帰ります」


こぼれそうになる涙を必死にこらえて、

私は先輩に背を向けた。


これが一番いい選択だった。


先輩にとっては。


思いを伝えた私が側にいることで、

答えを出さなければいけない。


優さんと重ねた私を突き放さなきゃいけない。


きっとそれは、辛いことだから。


このまま私がいなくなるのが一番良かった。


鼻の奥がツンとする。


涙がこぼれる前に走って、走って

逃げたら、ポロポロと涙があふれて来た。






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