ねぇ先輩、名前をよんで。
どんなに心が苦しくても
先輩を好きじゃなくなる事は出来なかった。
簡単に恋に落ちたのに、
好きじゃなくなるのは全然簡単じゃない。
あの時私が屋上に行かなければ……
もっともっと
幸せな恋が出来たのかな。
『ゆうちゃん』
名前を呼ばれるたびに苦しくなる。
先輩が名前を呼ぶたび、
自分は優さんの代りなんだと気づいてしまう。
「ぅ……うう」
人のいない裏路地に入って立ちつくす。
「ふ……っ、う」
先輩を思って何度泣いただろう。
苦しくて、悲しい。
最初から結末が見えている恋だった。
ひとり裏路地の隅っこで涙を拭っていると、
聞こえて来た足音が私の目の前で止まった。
「また泣いてんのかよ」
顔をあげるとそこには清水くんがいた。