ねぇ先輩、名前をよんで。
思い返すと自分ばっかりの気持ちで、
良くない関係だと気づいていたのに。
俺はそれをやめなかった。
いや、やめることが出来なかった。
「クソ……」
いっつもそうだ。
俺は失ってからじゃないと気づけない。
力強く手を握りしめる。
気づけば手のひらから血がにじんでいた。
柔らかく吹く風はどこか冷たくて、
心が虚しくなった。
屋上から外を眺める。
ふわりと広がる桜は
1年前の出来事を思い出させた。
こうやって同じように桜が舞う中。
彼女は突然やって来た。
俺が飛び降りてしまおうかと、思うと同時に。
『先輩……』
まるでここを目指していたかのように、
俺を見つめてすぐにそうつぶやいた。
どうして俺が先輩だと知っていた?