ねぇ先輩、名前をよんで。


側にいてくれる彼女のことを何も知ろうとしないまま、


巻き込んで、寄り添うようなフリをして……。


まっすぐに見つめてくる彼女の気持ちを


踏みにじった。


彼女になんと言えたら許されるだろう。


どうしてあげたら彼女が救われるだろう。


分からない。


ずっと、怖かった。


ゆうちゃんと名前を呼ぶたび、

彼女と一緒にいるたびに、


どんどん自分が依存していくことが。


またひとりぼっちにされるなら。


誰かを傷つけてしまうくらいなら。


最初からひとりで良かったのに。


俺は彼女の手を引き寄せてしまった。


今ならまだ間に合うと

突き放すようなことを言ってみたりもした。


そうすれば

俺から逃げていってくれるかもしれない。


でも彼女はまた屋上に戻って来た。






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