ねぇ先輩、名前をよんで。


彼でも断られたら

って考えたりしたのかなって思うと


なんだかかわいらしく見えてくる。


清水くんを見て、

ひとりくすっと笑うと

彼はぶっきら棒に言った。


「何笑ってんだよ」

「ふふっ、何でもない」


そうやって言って清水くんを追い越すと、

彼は追いかけて来て、小さく言葉を放つ。


「あのさ、浴衣着て来て」

「浴衣!?」


そんなの着るのは何年ぶりだろう。

もう小学生以来かもしれない。


「えーなんでよ」

「見たいから」


清水くんのストレートな言葉に

私の顔はかあっと赤くなった。


どうしよっかなあ……。


浴衣を着るなら新しく買わなくちゃいけない。


でも彼が望むなら見せてあげたい気がする。


「き、気が向いたらね」




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