ねぇ先輩、名前をよんで。
「どうかした?」
先輩にそう言われ、はっと我にかえる。
思わず、手をとってしまった。
だって今にも
飛び降りてしまいそうだったから。
まつげが長く、伏し目がちの目が
ぱちぱちとまたたいた。
「……あ、あの」
振り向いた先輩に
何も答えられず、視線をさまよわせていると、
先輩は弱々しく笑って尋ねた。
「名前は?」
「な、まえ……」
ーードキン。
目が合った。
久しぶりに見た。
先輩の顔。
ドキドキが高鳴って、
思わず言葉に詰まってしまう。
それを先輩は答えられないと判断したのか
困ったな、なんて頭をかいた。
すると先輩は私の持ち物を見つけて
驚いたように言った。
「名前、ゆうって言うの?」
「えっ……」