ねぇ先輩、名前をよんで。
「浴衣、可愛いね」
「ありがとうございます」
思ったよりも、
気まずくならずに話せたことにほっとする。
「じゃあまた……」
先輩は最後にそう声をかけると
私の元から去っていった。
顔色も良さそうだったな、先輩。
立ち去った彼の背中を見つめていると、
ジリっという足音で我に返った。
「あ、ごめん行こう……」
"行こうか"
と伝えようとした時。
彼は私の言葉をさえぎっていった。
「たぶん今日お前は
俺が似合ってるって言ったことより
先輩が言ったその言葉で頭がいっぱいになるんだろうな」
「えっ……」
私は彼を見る。
しかし清水くんは目を合わせてはくれなかった。
「な、んで……」
小さくつぶやいた言葉にも返事を返してくれない。