ねぇ先輩、名前をよんで。


「なんで、そんなこと言うの?」


そんなつもりじゃないのに。


確かに先輩に会った時、驚いた。


でも嬉しいとか、

ドキドキするとかそうじゃなくて……。



「悪い。忘れて」



彼はそう言うと私をおいて歩き出した。


「待ってよ!」


清水くんを追いかけて手をつかむ。


「私は今日、

清水くんと一緒にお祭り行けるのを

楽しみにしてたんだよ」


彼に言われた言葉も

見せてくれた笑顔も


先輩に会ったからと言って

打ち消されるものじゃないのに……。


必死に伝えたその瞬間。


ヒューっと音が響き、

目の前に大きな花火が上がってしまった。


楽しみだな、と笑った彼の顔は

明かりに照らされて良く見えた。


切なく、瞳を揺らす姿が。



「……そっか」



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