ねぇ先輩、名前をよんで。
やっと前を向けたと思ったのに、
上手く伝えることが出来ない。
最初からもっと、ちゃんと
素直に言えたら伝わったんだろうか。
「あ、あのね……清水くん!」
私は彼を呼び止めた。
清水くんはピタっと足を止める。
だけど振り返ってはくれなかった。
「わ、私は……この浴衣。
清水くんが見たいって言ってたから着て来たんだよ。
色とか水色が好きだって……
クラスの子と話してたの聞いたから……」
初めてだった。
彼とクラスの友達が
水色の浴衣を着てたらかわいいなんて言っていたのを聞いて、
自分では絶対に選ばないこの色を選んだ。
淡くて、明るい色。
私には絶対に似合わないと思ったけど、
清水くんはどんな顔するだろうって
楽しみで今日まで過ごして来た。