ねぇ先輩、名前をよんで。
俺だって言ったのに、
俺が言った時よりも
嬉しそうな顔をしたアイツの顔が忘れられない。
俺がゆっくり詰めていった距離を
アイツなら一気に詰めていくことが出来る。
それが悔しかった。
俺はちゃんとはるかのことを、
はるかと呼べるのに、
誰かの変わりなんかにしないのに。
はるかが見る先は
いつだってあの先輩なんだ。
そのことに気づいてしまった。
けっきょく俺たちは気まずい雰囲気のまま、
別れることになった。
でもあの時。
一番イラついたのは自分自身だ。
あの時ーー。
『あのさ……』
『ん?』
『いや、なんでもねぇ』
はるかに手を差し出そうとしてためらった。
付き合ってもないのに
手を繋ぐのはおかしいかとか
嫌がるかとか