ねぇ先輩、名前をよんで。
「なんで、逃げるんだよ!」
逃げたはるかを俺も慌てて
走って追いかけた。
クッソ……。
早いな。
追いつかねぇ。
「はるか!」
「…………」
呼んでも彼女は振り返らない。
「待ってて!」
声をかけても立ち止まることはない。
「はるか……っ!」
ようやく追いついて
手を伸ばし、俺は彼女を後ろから包み込む。
「こっち、向けよ……」
表情が見えない中。
静かな空間に包まれる。
はるかは小さくつぶやいた。
「なんで、来たの……」
「……ざっ、けんなよ。
あんな物残して来やがって」
追いかけないでいられるほど、
俺は冷静じゃない。
息を切らしたままその言葉をいう姿が
必死過ぎて笑えた。