ねぇ先輩、名前をよんで。




抱きしめる彼女の胸がドキン、ドキンとリズムを打っている。


「はるかが、いつかは

俺の方を見てくれるって信じてもいいのか?」



いつも、叶わない恋をして来た。


自分と同じように想う相手を側で見て


ぎゅっと締めつけられる想いを抱えたまま


ああまたか、って。


そう思うのは、

何度体験したって心が痛くなる。


待っていて見てくれる可能性があるなら……


いくらでも待つ。


でも無いのなら。


もう自分が苦しまない方に

逃げたっていいだろう。



「お前の思ってること、

聞かせて欲しい」


自分を見てくれない相手の側にいるのは辛い。


きっと、それは……


はるかだってよく分かっている。


俺の言葉にはるかはごくりと息を呑む。


するとまっすぐに俺を見つめて言った。


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