ねぇ先輩、名前をよんで。
彼にはいつも背中を押されてばかりだ。
本当にダメだなぁ……。
下駄箱で靴を履きかえると、
校舎から校門に続いて列が出来ている。
その列の間に入っていくけれど。
「人がいっぱいいるね」
「ああ、見えるか?これ」
ギャラリーが多すぎて、
通ってくる人があんまり見えない状態だった。
先輩はまだ居るんだろうか。
もう帰っちゃってたりして……。
まあ、でも先輩がいたとしても
自分から声をかけるつもりは無かったからいいか。
がやがやしている中。
「わっ……!」
人にトンっと押されて前にでて来てしまった。
「痛たた……」
顔をあげると、すぐ目の前に春先輩が立っている。
「春先、輩……」
「ちょっといいかな?」
卒業証書が入った筒を持っている先輩。
ビックリして私は目を大きく瞬きさせる。
「話がしたいんだ」