ねぇ先輩、名前をよんで。
そして先輩は私にそんなことを言う。
「あっ、えっと……」
「ダメ、かな?」
全然話す準備なんてしていなくて、
私が慌てていると、
清水くんは困ったように笑って
私の背中をトンっと押した。
「清水くん……」
そして彼は言う。
「またな」
「え……」
彼は手を振ると、すぐに背中を向けて
人混みの中に消えていった。
"またな"
待ってるな、とかじゃなくて
行ってらっしゃいとかでもなくて
"またな"
だった。
一緒に帰ろうと声をかけて来たのに。
彼は寂しげな笑顔を残して消えていった。
いつだって清水くんは、私の前でそんな顔をする。
全部、私のせい。
いつまでも中途半端にしていたから。
ごめん、清水くん。
彼が送り出してくれた。