ねぇ先輩、名前をよんで。




「もう死にたいなんて言わないで下さいね」


「俺、そんなこと言ったっけ?」


「背中がそう言ってました」


「敵わないなぁ、キミにはやっぱり」


先輩は遠くを見つめると、

誓うようにしっかりとした眼差しで言った。



「もう言わないよ。絶対にね」


じわじわと視界がぼやけてくる。

嬉しかった。


助けてくれた、先輩を

助けられたこと。


もう命を絶ったりしないと

先輩が言ったこと。



「ねぇ、先輩……」


私を見つめる先輩に、

私は笑顔を見せる。


そして静かに言った。


「ひとつお願いがあります」


自分に正直になるって決めたから。


もう我慢したりしない。


「何?」



最後のお願い。

私と先輩の罪を


思い出に変える言葉。



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