ねぇ先輩、名前をよんで。
「でもさ……っ、
ずっと想ってた先輩がお前を残して卒業していく
何も無かったわけじゃないのに
何もないフリして連れて帰るのは、
やっぱり違うよなって思った」
「清水くん……」
彼はいつだって自分のことよりも
私のことを考えていてくれた。
迷っている私に背中を押したのも。
話してこいと言ってくれたのも
全部清水くんだった。
いつもしてもらってるばかりで
私は何も返せていない。
「だからせこいことしなくて良かった
……って自分に言い聞かせてる」
「せこい、こと……」
「あの時賭けたんだ。
見送りに行って、もし先輩とお前が会えたら
俺はいさぎよく手を引こうって……」