ねぇ先輩、名前をよんで。
顔色が悪く、力なく歩く先輩。
その目には何も映っていなかった。
前に見た先輩とは
別人みたいだった。
太陽みたいにキラキラした笑顔も一切ない。
ただ悲しみをまとって歩いている。
今にも消えてしまいそうな先輩に
声をかけることも出来ず、
私は後ろ姿を見送った。
先輩の側には今、誰もいない。
消えてしまいそうな先輩を支える人はいなかった。
このまま先輩がいなくなってしまったら。
思わずそう考えてしまうくらい、
先輩は儚さをまとっていた。
先輩が消えてしまう。
想像しただけで、ぞっとする。
彼の側にいたい。
支えたい。
『先生、相談があります』
私はその次の日。
決まっていた進路を変えた。