ねぇ先輩、名前をよんで。



顔色が悪く、力なく歩く先輩。

その目には何も映っていなかった。


前に見た先輩とは

別人みたいだった。


太陽みたいにキラキラした笑顔も一切ない。

ただ悲しみをまとって歩いている。


今にも消えてしまいそうな先輩に

声をかけることも出来ず、


私は後ろ姿を見送った。


先輩の側には今、誰もいない。


消えてしまいそうな先輩を支える人はいなかった。


このまま先輩がいなくなってしまったら。


思わずそう考えてしまうくらい、


先輩は儚さをまとっていた。


先輩が消えてしまう。


想像しただけで、ぞっとする。


彼の側にいたい。


支えたい。


『先生、相談があります』


私はその次の日。

決まっていた進路を変えた。




< 25 / 250 >

この作品をシェア

pagetop