ねぇ先輩、名前をよんで。
ただ先輩がいてくれることを祈って、
私は屋上のドアを開けた。
するとそこに先輩はいた。
『先輩』
久しぶりの春先輩の背中は
私が学校まで見に行った時と変わっていなかった。
寂しさと悲しみを
背中にまとってそこにいる。
先輩は
屋上のフェンスから外を眺めて、下を見ていた。
そしてぐっ、と身を乗り出した先輩。
その時背筋が凍る。
ここからどこかに行ってしまうんじゃないか。
そんな気がして、私は慌てて先輩の手を取った。
――行かないで。
先輩はゆっくりと振り返る。
『どうかした?』
驚いた顔をして、
私を見た先輩を必死に繋ぎ止めた。
それが春先輩と2回目の出会いだ。
それからその日。
私は先輩に私の話し相手になって欲しいと伝えた。
最初は困った顔をしていたけど、
必死に頼み込んでなんとか約束を取り付けた。