ねぇ先輩、名前をよんで。


「またねー!」

「また明日」


この日の放課後。

私は風香ちゃんを見送ると、

先生に仕事を頼まれて、少し教室に残っていた。


日直だからと一人でコツコツと

資料のホチキス止めをする。


「今日はついてないなあ……」


一人でやるには、多すぎる量で

やってもやってもなかなか終わらなかった。


先輩と会える時間が減っていく。


早く会いたいのに。


そんなことを考えていると、

ガラガラと教室のドアが開いた。


「橋本かよ……」


私を見て、小さくつぶやいたのは

同じクラスの清水くんだった。


彼と話したことはない。


私の名前を知っていることすら意外だった。


ゴソゴソと自分の机の中を探る清水くん。


……にしても

"橋本かよ"って……。


なんか感じ悪いな。




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