ねぇ先輩、名前をよんで。




背中がとても孤独で、

寄り添ってしまいたくなる。


「でも不思議だよなぁ、

前はずっとひとりぼっちだったのに。


そんなこと忘れたみたいに寂しくなっちゃった」


遠くを見つめて寂し気な表情を浮かべる先輩は

今、誰を思っているんだろう。


私のことみたいに聞こえるのに、

心の奥で違う人を思って話している。


先輩はうつむくと、小さな声で言った。


「人って本当にもろいよね。

大事な人がいなくなっただけで


すべての色を無くしてしまうんだから……」


優さんのこと。


初めてだった。


先輩の口からあの時の、

大切な人を亡くした気持ちを聞くのは。


今もまだ想っている、彼女はもういない。


もう2度と会うことが出来ない人を

想い続ける先輩はどんな気持ちなんだろう。



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