ねぇ先輩、名前をよんで。





「17年間も生きて来たのに、

一瞬の出来事で自分の全部が変わっちゃうんだよ」


先輩は遠くを見つめて、

小さな声でつぶやいた。


「本当に人は弱くてもろい生き物だよ……」


儚くて、もろい。


苦しみのような切なさと

寂しさを毎日感じている先輩。


悲しいけれど、

先輩の気持ちを理解してあげることは出来ない。


悲しみを共感することも出来ない。


それがもどかしかった。


分かりますって言えたら。


先輩の気持ちは救われるだろうか。


少しは楽になるだろうか。


前を向くことをやめてしまった先輩は

心と共に、その場所に取り残されている。


「で、でも……っ!」


分かってあげたいと思った。


それでも。

分からなくて良かったとも思った。





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