ねぇ先輩、名前をよんで。






ぎゅうっと手を強く握って必死に伝えた言葉に

先輩は優しく頷いて言った。


「ゆうちゃん、こっちにおいで」


人は弱くてもろい。


何かあるとすぐにうつむいて、

暗い世界に落ちてしまう。


だけど強くもある。


何かをきっかけに

立ち上がろうとする強さを持っている。


そのきっかけでいい。


私は先輩が前を向くきっかけでいいから。


側にいたいー。


「抱きしめてあげる」


彼は私の耳元で囁いて、

優しく抱きしめた。


まるで、私のことをなぐさめるように

ポンポンと背中を叩いて、

私を落ちつかせてくれた。


「ゆうちゃん、好きだよ」


先輩の温もり。









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