ねぇ先輩、名前をよんで。
風香ちゃんはどうやら私と先輩が
両思いだと思っているらしい。
風香ちゃんいわく、
放課後、毎日ふたりきりで会っていて
好きじゃないわけがない!
だそうだ。
もし先輩に想う人がいなかったら
風香ちゃんの言うようになっていたのかな。
ううん、違う。
もし先輩に想う人がいなかったら
私は先輩のことを記憶の奥底にしまって思い出にしていただろう。
「両想い、か……」
遠すぎて笑えた。
先輩は手を伸ばしても
絶対に届かない距離にいる。
でも、それでも好きって気持ちが通じ合ったら
幸せなんだろうな。
先輩のしてくれるひとつひとつに喜んだり、
心がきゅんとなったり。
思いが通じ合っていることを知って幸せに包まれる。
羨ましいな……。