ねぇ先輩、名前をよんで。
「その言葉……!」
目を大きく開けて私を見る先輩。
「私、昔先輩に会ってるんですよ」
「嘘……」
「先輩と同じ中学なんです」
「知らなかった……」
本当に、先輩の眼中にも入って無かったんだな……。
まぁ、当然か。
話したのはあの一度きりだったから。
「友達が出来なくて、嫌になって……
あの日は授業をサボって屋上にいたんです。
そしたら先輩が話しかけてくれた」
「そっか……あの時の。
覚えてるよ。
あの日、
ひとりの女の子が、もうやめたいって言って屋上に来たこと」
先輩は小さく笑ってから感心したように言った。
「じゃあ、あの子がゆうちゃんだったんだ。
雰囲気変わったから分からなかったよ」
あの時の会話を覚えていてくれたことに
少し嬉しくなる。