ねぇ先輩、名前をよんで。
ゆっくりと、優しくそう言う先輩。
「それは……先輩が言ったからです。
逃げたくなったらおいでって」
「そっか。
じゃあ逃げたくなることは無かった?」
「はい。先輩の言うとおり
自分から行動したら全部変わりました」
決めつけて勝手に嫌になっていた。
自分が1歩、進むだけで
こんなに変わるなんて思いもしなかった。
「あの時はありがとうございました」
今ではみんなそれぞれ学校は離れて行ってしまったけれど、
月に1回、会う約束をしている。
『頑張ってみよう。
それで逃げたいと思ったらまたここにおいで』
キラキラした先輩に
勇気づけられた一歩を私は絶対忘れない。
先輩はその時のことを思い返しては、
何度も懐かしいな、
なんて言葉をこぼしていた。