ねぇ先輩、名前をよんで。



「お父さん、もう少しで仕事終わるみたいなんだけど……

今から駅前まで来れる?」


「うん、大丈夫だよ」


私は母にそう言って電話を切った。


先輩の元に戻ると、

少し話が聞こえていたみたいで


「呼び出し?」なんて聞かれる。


「はい、家族でご飯食べることになって……」


「そっか、じゃあ行ってらっしゃい。

俺はまだこうして外を眺めてるよ」


先輩はいつも、

学校にいてもいい時間のギリギリの時間までここにいる。


先輩にとって屋上は大切な場所なんだ。


私よりもずっと。


先輩の彼女と、

大切な思い出が詰まっているのかな。


でも何も聞かない。

聞くことが出来ない。


「分かりました、また明日」


それだけを言って私は屋上から出た。


少し寂しさが残ったままドアを閉める。


< 74 / 250 >

この作品をシェア

pagetop