ねぇ先輩、名前をよんで。
「お父さん、もう少しで仕事終わるみたいなんだけど……
今から駅前まで来れる?」
「うん、大丈夫だよ」
私は母にそう言って電話を切った。
先輩の元に戻ると、
少し話が聞こえていたみたいで
「呼び出し?」なんて聞かれる。
「はい、家族でご飯食べることになって……」
「そっか、じゃあ行ってらっしゃい。
俺はまだこうして外を眺めてるよ」
先輩はいつも、
学校にいてもいい時間のギリギリの時間までここにいる。
先輩にとって屋上は大切な場所なんだ。
私よりもずっと。
先輩の彼女と、
大切な思い出が詰まっているのかな。
でも何も聞かない。
聞くことが出来ない。
「分かりました、また明日」
それだけを言って私は屋上から出た。
少し寂しさが残ったままドアを閉める。